土壌とは何か?

土と肥料
わかば先生
わかば先生

今回は土壌学の基本的な部分を学んでいこうと思うよ。このページが第1回目になるけど、まずは土ってそもそも何なの?というところから始めようと思うんだ。土って身近なものだけど、意外と知らないことがも多いからしっかり学んでいこう!

土はどうやってつくられるか

 土壌の形成過程

土は岩石や火山灰、植物の遺体などを材料として作られます。ここでは岩石から土壌が生成される過程をみていきましょう。

過程1:岩石が風化作用によって破片となります。

過程2:破片は雨や風によって別の場所へ運ばれます。また、運ばれる際に破片はさらに細かくなります。

過程3:こうして異なる岩石から生じた細かい破片が混ざり合います。さらに、火山の噴火によって生じた火山噴出物も混ざり合うことがあります。これらが土壌の材料となります。

過程4:土壌の材料の上に地衣類(糸状菌と藻類が共生したもの)や微生物が住み着き始めます。これら地衣類や微生物の働き、あるいはその死骸によって、土壌の材料はさらに細かくなり、やがて腐植物質(生きていない有機物)が蓄積し始めます。

腐植物質:化学構造が特定されない有機物の総称。死んだ有機物全てを指す

過程5:次にコケ類やイネ科の草本類が住み着きはじめます。さらに細かくなった土壌の材料には土壌動物が生息し始めます。このあたりから、我々がイメージする「土壌」の姿に近くなってきます。

過程6:これらの植物の死骸は微生物によって分解され、さらに土壌が形成されていきます。また、腐植物質の量が増えてきて、これが砂から溶け出た無機物と反応して粘土鉱物が出来上がり、粘土鉱物と有機物が混ざり合い、土壌には団粒構造が出来上がる。

団粒構造:土壌粒子が小さな塊りとなり(粒団)、粒団がさらにかたまりとなり構造化したもの

過程7:この状態となると、生息する植物の種類が大幅に増加し、有機物の量も大幅に増加するため土壌の形成はさらに加速していきます。

わかば先生
わかば先生

土壌の形成過程を見てきたけど、土壌の形成には物凄く長い時間がかかるんだ。あと、材料となる岩石の種類、生育する植物の種類、気温や降水量などの気候、地形などによって形成される土壌は大きく異なるよ。

土壌の垂直方向の発達の差

土壌の形成過程から分かる通り、土壌は垂直方向に均一に形成されるわけではありません。土壌は風化に母岩が細かくなり、そこに植物が生育してその死骸によって形成されるんでしたよね。つまり表層に近い部分には植物の死骸(腐植物質)が蓄積され、土壌の形成は加速していく、その一方、腐植物質が届かない深い場所は土壌の形成がなかなか進まない、という現象が生じます。この垂直方向の土壌形成の差を、学問的にはA層、B層、C層という分け方をします。次にこれを見ていきましょう。

A層:土壌形成が進み有機物が多いため、下の層よりも明らかに黒色の層

B層:A層の下に位置し、降雨によってA層から流れ出た無機イオンが蓄積。やや褐色

C層:B層の下に位置し、まだ母岩とその破片によって形成された状態

さらに細かく分類する場合、A層の上にO層(未分解の有機物のある層)やA層とB層の間にE層(ケイ酸塩粘土、鉄、アルミニウムらが溶脱した灰白色の層)などの層があります。

私たちが農業で用いる土壌は、これらのうち主にA層となります。作物や耕耘の深さによってはB層の一部も用いられます。この耕耘する部分を作土層(さくどそう)や表土と言い、耕耘されない部分を下層土(かそうど)と呼びます。農業ではこの作土層が重要でありますが、下層土を全く無視してよいわけではありません。土壌の排水性あるいは保水性などは下層土の影響も少なからずあります。機会を見て、自分の圃場の下層土も一度確認してみるとよいでしょう。

土壌のはたらき

土壌は作物にどのように関わってくるのでしょうか。土壌は作物にとって必ず必要なものでしょうか。最近では土壌を用いない養液栽培などの方法も登場しています。このことから分かるように、作物にとって土壌は必ず必要なものではありません。土壌の持っている機能に代わりがあれば、土壌がなくても作物は生育することができます。しかし、普通は作物を栽培する場合土壌を利用します。それはなぜでしょうか。答えは、土壌は作物を栽培するのに適した機能をたくさん有しており、私たちにとって身近にあって、かつ安価に利用できるからです。普段あまり意識することはない、この土壌の機能について整理してみたので、一緒に学んでいきましょう!

水分と酸素の供給機能

土壌は気相、液相、固相の三相によって構成されています(別ページで解説)。作物が土壌に根を張ることで、作物にとって必要な酸素を気相から、水あるいは栄養分を液相から吸収することができます。

作物体を保持する機能

作物は土壌に根を張ることで自らを支え、倒れないようにしています。

温度の緩衝機能

地中の温度(地温と言います)は、気温に比べて変化が小さくなります。気温が高い日でも地温はそれよりも低く、気温が低い日でも地温はそれよりも高くなります。作物の生育にとって、気温と同様に地温も重要です。仮に極端に寒い1日があっても、地温はすぐには低下しないため、作物は枯死せずに生存できることもあります。逆に言うと、地温を上げたり下げたりするのはすぐにできないということも覚えておいてください。地温を上げるために畝にマルチフィルムを張る場合、定植する1~2週間前に張ることが推奨されるのはこのためです。

化学的な緩衝機能

温度と同様、化学的な反応に対しても緩衝機能があります。肥料を土壌に与えた場合、肥料分は土壌粒子などに吸着され、土壌微生物の体内に蓄えられてから放出されるため、土壌内の肥料分は急激に変化しにくい仕組みとなっています。また、土壌の酸度(pH)を矯正する場合も同様、石灰などを投入してもすぐには改善されません。土壌を用いない養液栽培などでは、直接根に養分が触れるため、投入する際の濃度などは慎重に判断していく必要があります。この土壌の化学的な緩衝機能については、メリットにもなりうるし、デメリットにもなりうることを知っておいてください。

病原菌の抑制機能

土壌中には多様な生物が生息しています。仮にその土壌に作物にとっての有害な病害菌が侵入したとしても、既に生息している生物によって有害な病害菌の増殖はある程度抑えられます。ただし、このような病害菌を抑制できるような土壌は、その状態に到達して維持するためには適切な管理を続けていく必要があります。また、病原菌を抑制できるとしても、完全に病害を発生させないというレベルに到達するのは相当大変であることを覚えておいてください。

土壌の分布と種類

日本の土壌分布

日本は地形が複雑であり、かつ降雨量が多いため植生が豊富です。また、火山から噴出した岩石が多いため、土壌の母材となる岩石の種類が豊富です。そのため、日本は土壌の種類が多様であることが特徴であり、これまで農林水産省などが中心となり土壌の種類を分類する作業が進められてきています。土壌の分類というと、学問的であり実学としての農業に役に立つのか?と疑問を感じる方も多いでしょう。ですが、ご自身が耕作する土壌がどの種類に分類されていて、どのような特徴があるか、を把握することはきっと営農に役立つはずです。

そこで以下のサイトを紹介いたします。このサイトは国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構の日本土壌インベントリーというページで、地図上から土壌の分類などを知ることができます。大変有用なページですので、是非一度ご覧下さい。

主要な土壌類型の特徴

主要な土壌類型の特徴を表にまとめました。ご自身の畑の土壌タイプがどのような特徴を持っているか把握しておいてください。

農耕地土壌の特徴

ここまで成り立ち別の土壌の種類を学んできました。これは土壌の基本特性と言うべきもので、突然大きく変化することはありません。しかし、土壌を農地として使用することで、その性質が少しづつ変化していきます。農地として土壌を使うということは、土壌を開墾することであり、肥料や有機物を施用し、耕耘することです。これらの作業は土壌に化学的・物理的な変化を与えます。ここでは、農地としての土壌の特性を学んでいきます。

畑土壌

畑土壌では次の特性があります。

・森林などと異なり、植物から土壌に供給される有機物が少ない。

・よく耕耘されるため、土壌中に多くの酸素が入り込み、有機物の分解が早い

・降雨を遮るものがなく、降雨によって養分が流亡しやすい。また、傾斜地では土壌自体が流出しやすい。

・大型トラクタなどが踏み固めるため、作土層の下に耕盤層と呼ばれる固い土層が形成されやすい。また、耕盤層が原因で根の伸長阻害、排水不良などが生じることがある。

草地土壌

・畑土壌とは逆に、耕耘されないため土壌中に酸素が流入しにくい。

・地表面(表層から5cm程度)に根が集中してマット状になる。

・耕耘されないため、地表面に有機物や施用した養分(特にリン酸とカリ)が蓄積しやすく、酸性化しやすい(土壌pHが下がる)。

・大型機械や放牧用の草地では家畜が踏み込む圧力で土壌が固く締まりやすい。

水田土壌

・作土層の下を固めてすき床を作り、長期間水を貯えることが可能である。

・水田土壌の表面にのみ酸素が供給され(酸化層と言います)、その下は酸素が不足している(還元層と言います)。

・表面の酸化層を除いて、還元層では酸素不足状態のため有機物の分解が遅い。

・水田土壌には単独で生活する窒素固定微生物が生息するため、天然の窒素供給がなされる。

施設土壌

・耕耘が行われるため、土壌中に酸素が供給されて有機物の分解が早い。

・降雨がないため、肥料が流されず施設土壌内の蓄しようすい(塩類集積と言います)

水田から畑へ転換した土壌

・畑として耕耘された際に酸素が供給されるため、水田の時に蓄積した有機物が分解され一時的に養分が放出される。

・水田の雑草や病原菌などは畑に転換されることによって生息できなくなり、一時的に雑草や病害の発生が収まる。畑として数年経つと、畑の雑草などが生息し始める。

・水田のすき床を十分に破壊しないと排水不良となりやすい。

わかば先生
わかば先生

今回の内容は基礎的なレベルで留めたよ。もっと勉強したい人は土壌学の教科書などを読んでね。土壌についてはもっと解説していくから、続きもしっかり学んでいこう!