草勢の重要性を理解する
ここでは農業の現場でよく使われる「草勢」という言葉を理解していこう。作るのが上手い農家は、この草勢を見極めて適切に管理している。品目によっては、草勢管理が基本にして究極と言えるかも。
草勢(そうせい)とは、植物の活力や成長する勢いを表す言葉です。「草勢が強い」「草勢を管理する」などのように使います。この段階では、栽培している作物の草勢を強いまま維持することが基本と覚えておきましょう。「草勢が強い」=「作物が健全に育っている」⇒「健全な作物は果実や葉などをたくさん生産する」からです。
たくさん収穫するためには草勢を強くすることが大事なんですね。
基本はそうだね。ただ、草勢が強過ぎるのもよくないんだ。品目や生育している時期によって適切な草勢は異なるからそれも覚えておいてね。
草勢が弱過ぎる場合は、(1) 病虫害に侵されやすくなり早期に枯れ上がる、(2) 収穫までに時間がかかる、あるいは収穫サイズまで到達しない、などの問題がでてきます。
一方、草勢が強すぎる場合、(1) 花がつかないため、収穫物である果実がとれない、(2) 茎やつるが途中でとまってしまう、などの問題がでてきます。
草勢はどうやってコントロールするの?
草勢管理が重要なことはよく分かりました。それでは、どうやって草勢を強くしたり弱くしたりするのですか?
草勢はその作物が健全な状態であれば強い方向にいくよ。作物栽培の基本は健全に育てることだよね。だから作物を健全に育てる=草勢を強く維持することが基本なんだ。最初の項目にある「栽培している作物の草勢を強いまま維持することが基本」を思い出してほしい。
作物が健全に生育していると草勢は強いまま維持します。作物を健全に生育させるためには、その作物にとって最適な環境を与えることが必要となります。
植物工場のような場合を除いて、現実には天候・気温などの環境をコントロールできるわけではない。だから、草勢を常に強く維持することは不可能に近いんだ。それでも作物を病害虫から守ってあげたり、必要な量の水や肥料を適切に与える、土壌環境を整えるなど、人間にできることを努めて少しでも草勢を強い状態を維持していこう。
草勢を強く維持することが基本という意味が分かりました。
草勢は「栄養生長と生殖生長」に深く関わってくるから併せてこっちも勉強していこうね。
作物によっては環境に対して過敏に反応するため、最適な環境の幅がせまいことがあります。家庭菜園などで人気のトマトは肥料濃度などに過敏に反応するため、注意深く草勢を観察することが必要です。
今の草勢を知る
草勢管理の重要性が分かったところで、もう少し具体的に考えてみよう。草勢をコントロールするためには、今の草勢がどういう状態にあるのかを知ることがとても大事なんだ。
草勢管理を身につけるための第一歩として、今の作物の草勢がどういう状態にあるかを知る方法をみていきましょう。ここでは一例として、きゅうりについて取り上げています。詳しくは各品目の管理方法のところで取り上げていきます。
見るポイント:つるの太さ、雄花と雌花の割合、葉の色、節の間隔など
草勢は継続して観察することで初めて適切に捉えることができるようになるんだ。去年と比べてどうなのか、ひと月前と比べてどうなのか、などね。各作目の観察ポイントを見る習慣を身につけていこう。
草勢が感覚的に分かってくると「今は草勢が強すぎるから水の量を少し減らそう」とか「今は草勢が弱いから多めに摘果(小さい果実を摘出して母体の負担を減らす)しよう」など栽培管理方針を決めるのに役立ちます。
草勢管理は少し先を読む
トマトの茎が太い・・・草勢が強すぎるようだ。そうだ!明日からは水の量を減らそう。
・・・しばらくして
やっと茎の太さが正常になってきた。よし!水の量をいつも通りに戻そう!
・・・しばらくして
あれ?今度は茎が細くなり過ぎているぞ。水の量を戻したのにどうしてだろう?
草勢を見て管理を変える場合、注意しなくてはならいことがあるんだ。管理を変えた後、少しタイムラグがあって植物の外観に変化があらわれるんだ。今回のケースでは茎の太さが正常になる少し前に水の量を戻せばちょうどよいくらいの草勢になっていたかもね。