きゅうりアーチの設置方法を解説するよ。ポイントは台風などの強風にも耐えられるようしっかりと地面に設置することだよ。かなりパワーを必要とする作業だから、できれば2人以上で作業できるといいね。
栽植方法を決定する
きゅうりアーチやネットを準備する前に、必ず最初に栽植方法を決めてしまいましょう。後から変更することが難しいことでもありますので、十分に検討したうえで決定しなくてはなりません。初めて栽培する場合は、まずは近隣の農家さんの栽植方法などをいくつか観察してみてください。栽植様式は地域の気象や栽培に対する考え方などによって大きく変わるものであり、「これが正解」というものはありません。基本的には地域のやり方をまねするところから入ると良いですが、機械装備や栽培面積など、それぞれ事情が異なる部分もあります。そのため、やはり最終的には自分で選択して決めなくてはいけません。特に事前に検討してほしい項目は次の通りです。
1 1条植えにするか、2条植えにするか
一般的には2条植えの場合が多いようですが、1条植えの方が通路からアーチ外側へ薬剤を散布しやすいなどのメリットもあり、最近では1条植えも増えているようです。もし圃場の植え付け場所に余裕があるようでしたら、筆者は1条植えをおすすめしています。
2 一般的なアーチを使うか、幅広アーチにするか
一般的には、アーチを組み合わせた時の下部の幅が2.4m程度、土中に30cm程度差し込んだ時の幅が2.0~2.2m程度の製品が多いようです。一部のキュウリ産地では、アーチ上部の幅が30~50cm程度長いものを用いています。これはアーチ内部の採光性、通風性がよくなることから、収量や病害発生低減などの効果が期待されて用いられているようです。一般的に入手することが難しいかもしれませんが、機会があれば試してみるとよいでしょう。また、通常のアーチに接続する延長用の19㎜パイプも販売されています。筆者はこの延長パイプを使用した経験がないので、「当サイトでおすすめ」とは言えませんが、上記のような効果が期待できると思います。
3 アーチ(畝)の奥行
アーチに張るきゅうりネットの長さには規格があります。9m,18m,36m,50m…などです。圃場の状況によって、栽培できる長さ(畝の奥行)は変わってくると思いますが、例えば10mの畝を立ててしまうと、9mのネットでは足りなくなり、18mのネットが必要となってきます。使わない分のネットは端のアーチに巻き付けてしまいますがもったいないですよね。ネットの規格を事前に把握しておいて、それに合わせて調整することも考えてみて下さい。
アーチを立てる
栽植方法が決まり、それに合わせた畝を立ててマルチを張ったら、いよいよアーチを立てていきます。もしマルチ内にかん水用のチューブを配置している場合、チューブはアーチの外側に少しずらしておきます。これはアーチパイプを差す際に誤ってチューブに穴をあけてしまわないためです。マルチに設置される、かん水チューブ、アーチの差し場所、苗の位置関係は下の図のようになります(1条植えの例)。
最初に、アーチの配置間隔について決めておきましょう。一般的に1.5~2.2mの範囲で配置されることが多いですが、筆者は1.8m間隔をおすすめします。理由は、一定の強度が確保されることと、農業資材は尺貫法に従った規格の製品が多いので、アーチ配置についても約6尺にあたる1.8mにしておくと後々楽になります。
アーチを補強してネットを張る準備をする
1 アーチ上部を単管パイプで接続する
アーチ上部を19㎜の単管パイプでつないでいきます。単管パイプはアーチの下になるようにして固定します。図は簡略化するため、端アーチ×2本と中間アーチ1本で表記していますが、実際には全ての中間アーチで作業を行ってください。
単管パイプは3.6mのものを使うと作業性がよいです。パイプはスエジ加工(パイプの片方の先を細く加工してあるものであり、パイプ間の接続が簡単になります)済みのものがよいでしょう。単管パイプとアーチは金属製の留め具で固定することをお勧めします。留め具は「クロスワン」「フックバンド」などを使いましょう。
ここでは単管パイプで固定する方法を紹介していますが、単管パイプだとトップヘビーな状態となるため、これを避ける場合、プラスティック製の棒や竹などで固定するケースもあるようです。また、アーチ両端付近にアンカーなどを地面にしっかりと設置したうえ、ハウスバンド(マイカ線)などでしっかり縛って固定する方法もあります。
2 アーチを筋交いで補強する
次に、端のアーチに筋交い用のパイプを設置します。生育の初期段階では問題ないのですが、生育が旺盛になると思った以上にアーチ全体に過重がかかります。ネットを通じて、畝の中央方向にテンションがかかりますので、しっかり補強しないと端のアーチが畝中央方向に倒れてしまいます。これを避けるため、上図のように筋交いを設置して補強しましょう。
筋交い用のパイプはなんでもよいのですが、ある程度(2m以上)の長さが必要です。よく見かけるのは、余ったアーチをそのまま筋交いに使うやり方です。筋交いはアーチの内側にくるように配置しましょう。パイプをハンマーなどで叩いてしっかり打ち込んだ後、アングルバンドなどでアーチと固定します。
3 ハウスバンドなどでアーチとアーチを結ぶ
次にアーチ間をハウスバンド(マイカ線)や園芸用のひもなどで結んでいきます。マイカ線などはアーチ肩の部分とアーチ下部、その中間の3か所くらいでよいでしょう。このひもを張る目的は2つあります。
①アーチ上部と中間部分は、果実や葉などで重くなったネットがアーチの内側に落ち込んでくるのを避けるためです。
②アーチ下部のひもは、ネットを通してアーチとネットを固定するためです。
ここで覚えてほしいのは、アーチ下部のひもは他のひもとは目的が異なることです。アーチ下部のひもは後でネットを展張する際にほどいてネットに通すので、ここではゆるく仮留めしておいてください。下部以外のひもはある程度強めに引っ張って端アーチに結んでください。また中間アーチに対しては、短く切ったマイカ線などを使ってしっかりと固定してください。